ペーパーフィルターによるドリップ法は、家庭に美味しいレギュラーコーヒーを普及させた素晴らしい発明だと思います。それ以前のコーヒー抽出法は、古くはアラビアからトルコを経てヨーロッパに伝えられた煮出し法(トルココーヒー)や煮出したものを金網や布袋で濾過する方法でした。
1908年、ドイツ・ドレスデンのメリタ・ベンツ婦人によってそれまでの濾し器の代わりに、もっと簡便なペーパー(吸い取り紙)を使う方法が考案されたのが始まりです。現在はメリタ式と日本のカリタ式が一般に普及しています(その他に、コーヒーサイフォン社のコーノ式もある〜次回に少し触れます)。では、この二つの方式に違いはあるのでしょうか?
この二つの方式は名前も形もよく似ています。当店にコーヒー豆を買いにこられる方で「カリタ式で挽いてください」「メリタ式でお願いします」と言われることもあります。外見上の違いは、メリタ式のドリッパーは「一つ穴」、カリタ式のそれは「三つ穴」です。
メーカーの推奨する抽出法は、メリタ式では、先ず95℃の湯をコーヒーの粉全体が湿る程度に注ぎ、30秒程蒸らした後、フィルターの人数分の目盛りまで一気に湯を注ぐとしています。一方のカリタ式では、完全に沸騰したお湯を用い、はじめに蒸らすところまではメリタ式と同じですが、そのあと人数分の湯を5〜6回にわけて注ぐとあります。
両者とも高温の湯を用いるところに問題がありますが、湯を一気に注ぐのと5〜6回に分けていれるのとに「思想」の違いがあります。メリタ式はあくまでも簡便に誰がいれても同じようにという「標準化」の概念を感じます。カリタ式は湯の注ぎ方に個人差が出やすいのですが、「ネルドリップ」の流れを受け継いでいるように思われます。
味の違いはどうかと言いますと、両方式を忠実に実施した場合、メリタ式は湯のなかでコーヒーの粉が一時期浸漬する状態になるので、サイフォンでいれたような香り高い味になります。一方のカリタ式は、湯がコーヒーの粉の濾過層を通り抜ける過程でその香味を得る透過法です。ばらつきが出やすいのですが、条件が整うと「ネルドリップ」に近い、まろやかで且つ深みのある味が出せます。
もっともお客様は、メリタの器具を使ってカリタ式で、カリタの器具を使ってメリタ式でいれたりしているようです。美味しければそれでいいんですが、もっと美味しいコーヒーがあるかもしれないと思ったら、いろいろと試してみるか私とカウンター越しにコーヒーのいれかたを尋ねてください。
次回は「ネルドリップ」について触れるつもりです。
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