珈琲のある情景

第13回 コーヒー豆の焙煎 その2 
焙煎したコーヒー豆を挽いたときやペーパードリップ等でいれたとき、室内に漂うあの芳醇な香りは、コーヒー生豆のときにはなかったものです。このコーヒー独特の香りは焙煎と言う加熱変化によって生まれるもので、その香りの成分は現在分かっているだけでも500種あまりにおよぶと言われています。従って当分の間は化学品等の合成によってコーヒーの香りを作りだすことは出来ないものと思われます。

コーヒーの味についても同様のことが言えます。焙煎前のいわゆる生豆は青臭く色も香りもコーヒー飲料とは言えないものです。古くはコーヒー生豆を煎じて薬用として飲用した時代もあったとのことですが、あるとき「火」との接点を持つことによって全く異なった飲み物として生まれ変わりました。そして何年も経て積極的に加熱変化をもたらす焙煎の技術を積み上げてきたのです。
とはいえ、コーヒーの味と香りを決める焙煎は多分に感覚的なものでもあります。焼く人の味覚で決まる要素も多いのです。それがまたコーヒー専門店の個性ともなります。前回にも触れましたが、焙煎度と味との関係をみると、浅煎りは「酸味」が強くなります。しかし、ブルーマウンテンやハワイ・コナ,クリスタルマウンテン等の良質な高地産の豆はこの酸味が特徴で、深煎りによって酸味を消してしまうとその持ち味がなくなってしまいます。美味しい酸味は果物のように甘味を伴ったさわやかな、後味のよい味わいがあります。私は酸味の善し悪しでコーヒーの品位が決まるのではないかと思っているくらいです。ただ、焙煎後日数の経過したコーヒーは酸化(劣化)し、後味の悪い酸味を呈します。この酸味はコーヒー本来の酸味とは全く別のものであることは、既にこのコラムでお話しました。

一方、コーヒーの「苦み」はコーヒーの味の最も重要な構成要素で、コーヒー好きにとってはたまらなく好ましいものです。逆に、コーヒーが嫌いな人にとっては、好きになれない理由の最たるものでもあります。前記「酸味」はコーヒー生豆がもともと有する特性ですが、「苦み」は焙煎がもたらした産物とも言えるもので、この苦みの強弱のつけ方が焙煎する人の味覚によって決まります。この「酸味」と「苦み」が調和したときに「甘味」を感じます。単品で両方を引き出すことはなかなか難しいのですが、それぞれの豆の個性として楽しんで欲しいと思います。

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