珈琲のある情景

第11回 コーヒー豆は木の実の種
 コーヒーの木はアカネ科に属する熱帯性の常緑潅木で、園芸店などで鉢植えの観葉植物としても売られていますが、コーヒーの実が結実するためには特別な環境が必要です。コーヒーを栽培している国は世界で約70カ国とされ、赤道を中心に南緯、北緯25度の範囲の地域で、この範囲が「コーヒーゾーン」または「コーヒーベルト」と呼ばれます。

 コーヒーの木はとてもデリケートで、赤道に近い国々でも数百メートルから2500メートルの高地に限られ、15から25℃の温暖な気温と日照、湿度、降雨量などの条件が整った環境の下でのみ栽培が可能なのだそうです。日本でも温室では花が咲き、結実するようで、確か長崎県にコーヒーの温室農園があると本で読んだ記憶があります。
 花は数センチの白色でジャスミンに似た芳香があるそうで、チャンスがあればぜひ実物を見たいと思っています。実はちょうどサクランボに似た大きさと色、形をしており、「コーヒーチェリー」とも呼ばれます。この実は以前当店にもあったのですが、萎えてその内干からびてしまいました。
 「コーヒー豆」はこの実の種の部分で、1個の実の中にピーナッツのように1対が向かい合って存在します。稀に1つの実の中に1個しかできない「単実」や数個できるものがあり、前者を「丸豆」または「ピーベリー」と呼び、これだけ集めて珍品として取引されているものもあります。後者は三角状の尖った形をしており、通常の豆の中に混入していますが、不完全豆としてハンドピックで極力取り除いています。

 採取されたコーヒーの実は「コーヒー豆」として精製(脱穀)、乾燥され出荷されます。当店に無造作に置かれた「生豆」がまさにそれで、初めて見る方はびっくりなさることがあります。この生豆はやや青臭く、いわゆるコーヒーの香りなど微塵もない代物ですから。しかし、ひとたび焙煎と言う炒る工程を経ると生豆からは想像も出来ない芳醇な味と香りのコーヒー豆に生まれ変わります。この炒り上げられた瞬間のコーヒーの香りはたまらなくいいもので、この事実を発見した人はえらいなあ、といつも思いながら焙煎しています。